クラウド型勤怠管理システムとは?メリットとデメリット、主な機能を解説

#勤怠管理1

2024年11月01日

勤怠管理システムは、社員の勤務状況を効率的に管理するためのツールです。導入により従業員の出退勤時刻の正確な把握や、適切な労働時間の集計、休暇管理などをスムーズに行うことができます。また、給与計算など他システムとの連携により、業務効率化にも役立ちます。この記事では、勤怠管理システム導入のメリットとデメリットを解説します。また、具体的な機能について紹介しているため、自社に合う勤怠管理システム選びの参考にしてください。

1.クラウド型勤怠管理システムとは?

 クラウド型勤怠管理システムとは、オンラインで従業員の出勤・退勤時間や残業など、勤務状況を管理・記録するシステムのことです。インターネット環境があれば時間や場所を問わずにアクセスできる利便性の高さや、初期費用をかけずに導入できる点、個々人ごとに異なる勤怠情報を自動集計してくれる点などから注目を集めています。働き方が多様化した現代において非常に有益なツールといえるでしょう。

2. 勤怠管理の課題

 「働き方改革」やコロナ禍により働き方の多様化が進んだ結果、勤怠管理にかかる手間が増え、人事や総務、経理といったバックオフィスの負荷増大やミスなども顕在化するようになりました。勤怠管理の課題として「勤怠状況の把握ができない」「紙からの転記・集計の手間」「有給休暇・残業申請の手間」などがあげられます。


 特に労働時間に関する規定は労働基準法36条、36協定(さぶろくきょうてい)に定められているため注意が必要です。36協定を結べば無制限に時間外労働をさせられるというわけではなく、法律によって上限が決まっています。この規定に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。


 労働基準監督署から「是正勧告」を受けた場合は、社名が公表される可能性があります(一定の基準があります)。勤怠管理をおざなりにすることは、企業の評判や信用を失うことにつながるのです。

3. 勤怠管理の必要性

 こうした背景から、限りある人員で勤怠管理を効率よく正確に行うために、ツール・システムの導入している企業が増加しています。中でもクラウド型勤怠管理システムの導入はこれらの勤怠管理の課題を解決するための手立てとして注目を集めています。勤怠管理が求められる主な理由は過重労働の防止とリスクマネジメントです。労働基準法ではフルタイムの労働時間は1日8時間、週に40時間と定められていますが、労使間で協定を結んだ場合に限り、残業や早出・休日出勤などの時間外労働が認められることになっています。

 総務省が発表した「令和5年版情報通信白書」によればクラウドサービス市場は前年比29.8%増にまで増加しています。クラウドを活用する企業が、クラウドを導入していない企業よりも生産性向上に成功していることも示されており、クラウドサービスと労働生産性の相関性が明確になっています。また、クラウド勤怠管理システムの導入は労働生産性向上だけでなく、業務の効率化、不正行為防止、セキュリティ向上といった効果を企業にもたらします。


 今後もクラウド勤怠管理はサービスの充実が期待され、競争力を高めるために不可欠なツールといえるでしょう。

4.勤怠管理システムの主な機能




多彩な打刻機能(PCやスマホ、Web、ICカード、指紋認証など)

 正確な勤怠管理は正確な打刻があってはじめて可能になります。毎日の打刻が様々な方法で正確にできることが勤怠管理システムの必須要件といってもよいでしょう。


 したがって、どの勤怠管理システムも、従業員が簡単にかつ正確に打刻できるように工夫を凝らしています。例えば、交通系のICカードを専用の機械にかざすだけで打刻ができたり、PCやスマホからタップするだけで打刻ができるなど、リモートワークや在宅勤務にも配慮されたサービスが複数存在します。


 また、指紋や静脈認証など、生体認証で打刻をするサービスも存在します。他の従業員が代わりに打刻するなどの不正利用を防止できるので勤怠管理の正確性と安全性が高まります。

リアルタイムで勤怠状況を確認できる

 勤怠管理システムは集計がリアルタイムなのも大きな特徴です。アナログな勤怠管理方法の場合、集計は月に1回手作業で行うことが一般的です。月の締め処理の際でないと勤務時間が具体的に把握できないため、過剰な時間外労働の実態把握が遅れてしまう可能性があります。


 勤怠管理システムであれば、集計結果は掲示板にリアルタイムで可視化されます。全体の時間外労働が増加傾向にあるか減少傾向にあるかを分析しながら従業員の勤怠管理を把握・調整できます。

シフト作成・管理機能など

 勤怠管理の中で手間のかかる作業の一つがシフトの作成と管理です。飲食業・販売業などのサービス業をはじめ、製造業・物流系などの企業は、従業員の勤務状況をシフト制で管理しています。シフト表の作成は毎月行わねばならず、管理者にとっては大きな負担になりがちな業務です。各従業員にシフト希望を提出させExcelなどにまとめ、印刷して各従業員に配布。その後修正があれば再びExcelを修正し...といったアナログなやり方では、かなり煩雑です。管理職の負担も大きなものになります


 勤怠管理システムのなかには、シフト作成・管理を効率化する機能が付いている製品もあります。例えば、従業員はスマホから簡単な操作でシフト希望を提出すると、システムの表に自動的に反映され、管理職も簡単な操作でシフトの調整を行えます。そして、シフト表が完成したらオンライン上またはメールですぐに各従業員に配布できます


 従業員が多い企業や複数店舗がある企業において非常に業務効率が高まります。

休暇/残業申請承認機能(ワークフロー)

 リモートワークや在宅勤務の導入において、課題になりやすいのがワークフローの効率化です。従来は社内でワークフローが完結していたため、アナログな紙の書類などでもさほど問題はありませんでした。


 しかし、リモートワークなどで遠隔地とのやり取りを行うようになると、紙の書類では時間がかかりすぎますし効率的ではありません。休暇や残業申請の手間の増加は、年次有給休暇の取得率の低下や、従業員の長時間労働を誘発するリスクもあります。


 勤怠管理システムはインターネットを介して、どこからでもワークフローの申請・承認を勤怠クラウド内で完結できます。ワークフローを効率化することで適切な休暇取得、時間外労働申請が実現できます。

有休休暇・代休・振休管理

 年次有給休暇やその他の休暇の申請・承認・差し戻し業務に加え、時間単位での休暇取得にも対応しています。一覧画面では従業員の休暇残数や取得状況も確認できます。

有休休暇・代休・振休管理

 勤怠管理において特に効率が悪い作業の一つは手作業による集計作業です。勤怠管理システムでは従業員が入力した勤怠情報を、システムが自動集計してくれるため、集計ミスや集計が遅れてしまうことがありません。

帳票出力(CSV・PDF形式)機能

 勤怠管理システムで集計された従業員の勤怠データは、CSVやPDF形式で出力できます。例えば職場でシフト表を掲示したい時や、業務を見直す際の参考資料として使う場合に便利な機能です。給与計算システムと連携しCSVで出力されたデータをインポートすれば、集計した従業員の勤怠データを簡単に給与へ反映できます。これにより入力ミスの防止や工数削減にもつながるでしょう。

長時間労働や打刻漏れのアラート機能

 勤怠管理の目的の一つは長時間労働の防止です。打刻が正しく行われなかったり、長時間労働に気づかなかったりすると本末転倒になります。したがって、勤怠管理システムには長時間労働や、打刻漏れを管理職にメールなどで知らせる機能が付いているサービスが多く存在します。

5.クラウド型勤怠管理システムのメリット

法改正にタイムリーに対応できる

 勤怠管理は、労働基準法に密接に関わっているため、勤怠管理は法改正の影響を大きく受けることになります。労働基準法は、世の中の状況や労使の状況によって改正が繰り返されるため、常に対応が求められます。「働き方改革関連法案」が2019年4月1日から順次施行されていますが、今後もこのような改正が行われることは自明でしょう。勤怠管理はそのたびに管理方法や業務の見直しを余儀なくされます。


 クラウド型勤怠管理システムであれば、自動でアップデートがなされて最新の法改正に対応できるため、法改正の度に自社で改修する必要がありません。対応漏れも心配無用です。

コスト削減/人件費の削減

 勤務時間や残業時間の集計から、有休・代休の申請や取得状況、残数の管理など人事・労務担当者の業務はとても煩雑です。特に給与計算は工数も人的コストもかかる負荷が大きい業務です。給与計算システムと連携できる勤怠管理システムや、給与計算機能が予め搭載された製品の導入によって、データの入出力・転記・計算作業が効率化できます。大幅な業務効率化によりコスト削減・人件費の削減につながるでしょう。

初期投資が抑えられる

 クラウド型の勤怠管理システムは、サービス提供会社が用意したサーバを利用するため、自社でのサーバ構築費用がかかりません。自社でシステムを構築するオンプレミスの場合、数百万円程度の初期費用を見積もる必要があります。一方クラウド型の場合、サービス提供会社に支払う初期費用が比較的安価になっています。


 初期投資をなるべく抑えたい企業や、従業員規模にあわせてシステムの入れ替えや見直しの可能性がある企業にとっては、特に適しているでしょう。

従業員の労働生産性を上げることができる

 勤怠管理システムでは、システムが自動で労働時間を計算するのでリアルタイムに労働時間を把握することができます。例えばプロジェクトの場合、工数管理をする機能を使えば、従業員ごとの労働時間と業務の進捗状況を見ながら、遅延している工程に対して有効な措置を取ることも可能です。


 また、勤怠管理システムにはアラート機能が搭載されています。36協定で定めた労働時間の上限に近づいた従業員や十分な休暇取得ができていない従業員がいれば、アラート機能で「働き過ぎ」の状況を上司や本人に知らせることができます。


 休日取得や出張や残業などの事前申請や打刻漏れ等による事後申請もシステム上で行えます。従業員の手続きや上司の承認にかかる手間を省くことで、会社全体の業務効率を上げることにも貢献します。

業務時間が大幅に削減できる

エクセルやタイムカードで管理している場合と比較すると、集計やチェック、分析など手作業に頼っていた業務を自動化できるため、勤怠管理業務にかかる時間を大幅に削減できます。例えばフレックスタイム制や変形労働時間制などといった複雑な雇用形態も、個別に雇用形態を設定することで複雑な労働時間の集計を簡単に行うことができます。


また、勤怠管理システムには、休日取得状況を管理する機能や勤怠に関わる申請・承認機能も備わっています。手続きが完了するまでスピードアップが図れる上、その結果は勤怠システムに自動的に集約されるので、担当者が手作業で処理する必要はありません。さらに、給与計算ソフトとデータを連携すれば給与計算作業の効率化も図れます。勤怠管理システムを導入すれば、これまでの勤怠管理に必要とされていた労力と時間が大幅に削減できますので、担当者は本来尽力したい業務に専念することができるのです。

6.クラウド型勤怠管理システムのデメリット

従業員が慣れるまで時間がかかる

勤怠管理システムを導入して従業員が慣れるまでにはそれなりに時間がかかると考えておくべきです。これは勤怠管理クラウドに限らず、新しい業務システムを導入したときや社内の制度を変更したときには起こりやすい現象です。


勤怠管理クラウド導入の際には、従業員の負担を軽減できるように、ヘルプデスクの設置や社内研修の実施、サポート体制が充実しているクラウドサービスを選ぶことなどが重要となるでしょう。

拡張性が高くなく、カスタマイズの制限がある場合がある。

オンプレミスに比べてクラウド型は拡張性が高くない製品があります。製品によってはカスタマイズ対応で企業の独自ルールや集計に沿った製品できるケースもあります。自社の就業規則や働き方に対応できる機能を搭載しているか、カスタマイズが可能かどうか事前に確認が必要です。

連携できるシステムは製品によって異なる

クラウド型勤怠管理システムの場合、連携できるシステムが限定されている場合があります。給与計算システムとの連携については対応可能なシステムがほとんどですが、それ以外のシステム連携を希望する場合は確認が必要です。給与計算システム以外には、人事管理システムや人事評価システムとの連携に対応する製品もあります。

7.課題を洗い出し自社にあう勤怠管理システムを導入しよう

 勤怠管理システムを導入する際は、目的を明確化し、メリットとデメリットを正確に把握して検討することが大切です。適切な勤怠管理システムを導入し、社内に浸透することができれば、業務効率化・統制化が進み会社全体の業績アップにもつながります。導入を検討する際は時間をかけ、自社に最適な製品を検討しましょう。